皮膚真菌症の啓蒙にも注力【お茶の水真菌アレルギー研究所】

梅雨の時期から秋の長雨まで、多湿の時期が長い日本の気候は、カビの繁殖にとっては絶好の条件です。お風呂場、キッチン、洗面所などの水周り、押し入れやクローゼットの中、家具の裏など、風通しの悪い場所はカビが生えやすくなります。カビは私たちの健康に影響を及ぼします。アレルギー性鼻炎や喘息のアレルゲンとなる他、カビはさまざまな皮膚真菌症の原因にもなります。お茶の水真菌アレルギー研究所は、日本人にも多く見られる皮膚真菌症の国内有数の研究機関です。

お茶の水真菌アレルギー研究所の概要

お茶の水真菌アレルギー研究所は、皮膚真菌症の研究を行っている、順天堂大学関連研究施設です。埼玉県日高市、東京都豊島区池袋、同じく東京都文京区本郷の3カ所に研究室を持っています。構成員は、名誉所長を務める順天堂大学理事長の小川秀興氏、所長の比留間政太郎氏は順天堂大学特任教授です。副所長を務める比留間環氏は、埼玉県日高市の比留間医院の院長でもあります。その他、4人の名誉研究員、研究員が在籍しています。研究員はすべて医師、または順天堂大学皮膚科の准教授です。

お茶の水真菌アレルギー研究所の研究内容

皮膚真菌症の検査、診断、治療などに関する問い合わせの他、トンズランス感染症の検査も行います。

トンズランス感染症とは、20年ほど前に海外から国内に持ち込まれた新しいタイプの真菌症です。おもに柔道やレスリングなど格闘技選手の間で感染が広く見られます。格闘技のマットや畳、あるいはタオルや道着などから感染していると考えられています。真菌は頭皮に感染し、脱毛を伴うフケやかゆみを引き起こします。また、道着がすれる顔や首もとなど上半身を中心に湿疹やかゆみを伴う赤みが表れます。非常に感染力が強いうえ、いったん感染すると治りにくく、しかも治ったように見えても実際には治らない無症候性キャリアと呼ばれる状態になるやっかいな感染症です。合宿や遠征試合などの際に、集団感染するケースが増えています。お茶の水真菌アレルギー研究所ではトンズランス感染症の治療法や対策法を研究しています。

お茶の水真菌アレルギー研究所の業務一例

啓蒙活動に非常に力を入れていて、皮膚真菌症検査の講習会などを開催しています。皮膚真菌症は皮膚科外来の診療の10人に1人を占めているほど、日本人に多い疾患であるにもかかわらず、医学部での授業に皮膚真菌症の実習はありません。皮膚科学の講座で1単位取得するのみです。これでは皮膚真菌症の適切な診断や治療ができるか心配です。

お茶の水真菌アレルギー研究所では、皮膚真菌症の臨床診断、培養、治療ができる医師が増えるように、勉強の機会を提供しています。お茶の水真菌アレルギー研究所の講習会は、1人からでも申し込みできます。皮膚真菌症入門のDVD制作などにも携わっています。また、一般の方も皮膚真菌症について正しい知識を深めることができるよう努め、所長がNHK過去には「ためしてガッテン」などの番組にも出演しています。