社会福祉法人・希望の家附属北関東アレルギー研究所の活動

今から50年前、日本人で食物アレルギーや花粉症などのアレルギー疾患にかかる人はほとんどいませんでした。ところが、ほんの数十年のうちに日本はアレルギー大国へと変貌を遂げます。いまや国民のほとんどが何らかのアレルギーを持っていると言われる時代です。なぜ、こんなにもアレルギー疾患に悩む人が増えているのか、どんな治療法や予防法があるのか、アレルギーに関する研究は急務です。北関東のアレルギー研究の拠点となる、社会福祉法人・希望の家附属北関東アレルギー研究所ではどんな研究が行われているのでしょうか。

社会福祉法人・希望の家附属北関東アレルギー研究所の概要

2008(平成20)年に開設された、アレルギー疾患の研究所です。研究所は臨床部門と研究部門の2つのチームに分かれ、アレルギー疾患の診療、治療法の普及や、地域における啓発活動、研究成果を世界に向けて発信するといった活動を主に行っています。

初代の所長である森川昭廣氏は、群馬大学医学部卒業後、群馬大学医学部小児科を経て、スウェーデン・イエテボリ大学臨床免疫学教室研究員に、その後、群馬大学医学部付属病院副院長、上海交通大学付属児童医院顧問教授などを歴任した人物です。「小児喘息のおはなし」などの著書がある、小児アレルギーの第一人者です。

現在の2代目所長である荒川浩一氏も、群馬大学医学部を卒業し、群馬大学医学部付属病院や群馬大学医学系研究科小児科学分野教授などを歴任しています。

社会福祉法人・希望の家附属北関東アレルギー研究所臨床部門の診療対象

検査、診療の対象となるのは、気管支喘息や花粉症を含むアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーおよびアレルギー性結膜炎、さらに接触性皮膚炎と金属アレルギーなどです。症状を把握して病名を特定するため、詳しい問診、血液検査や皮膚反応、喘息などの症状が見られる場合はレントゲン検査や肺機能検査などを行った後に、診療を行います。

北関東アレルギー研究所の臨床部門では、単に患者さんの治療を行うだけでなく、アレルギー疾患を持つ患者さんのご家族の勉強会も開催しています。患者さんのご家族と医師、薬剤師、看護師や理学療法士とで、勉強会を開催して情報共有を行い、生活改善指導や症状緩和に向けて、一丸となって治療と予防に取り組める体制を整えます。

研究活動の主な内容

喘息の原因特定解明やアレルギー疾患の疫学研究を行い、研究成果を論文にまとめ、国内に情報発信しています。過去においては「アレルギー専門医の現状と将来」などの論文を発表、一般社団法人日本アレルギー学会における講演などを行いました。

また、北関東アレルギー研究所では地域貢献にも重点を置いており、たとえば2021年には群馬県の自治体と協力し、「食物アレルギーオンラインセミナー」を開催しています。講演および質疑応答の形で、地域の方へのアレルギーへの理解を深めるとともに、現在、食物アレルギーで苦しむ患者さんやご家族への生活指導などにも積極的に関わっています。